さて、今回はRISC-Vを使うメリットについて書きたいと思います。特に市場に出回ってる商用ライセンスのISAのプロセッサに対して何が良いのかという点を客観的に書こうと思います。
結論的に言うと、オープンな規格であるという点から生まれるコストメリットと中立性で、その2つがもたらす選択の自由と拡大ですかね。
まずは、コストメリット。商用ライセンスであるISAのプロセッサを導入しようとすると当然そのライセンス費が発生します。一方RISC-Vでは一切ISAのライセンス費はかかりません。と表面的には言えますが、使うだけであれば、ISAのライセンス費が直接表に出てくることもないので、これが必ず当てはまるかというとなんとも言えません。
使う側のメリットと言いながら、いったん作る側の話をしますが、ISAのライセンスがオープンであることは作る側にも大きなメリットをもたらします。商用ライセンスのISAを用いてプロセッサを開発しようとするとそこには確実にライセンス費が必要になります。一方RISC-Vはそれがなく誰でもプロセッサを作ることが可能です。作ったプロセッサを売っても良いし、無料で配布しても良いし、自分で使っても構いません。ISAのライセンス費という参入障壁がなく、世界中において開発が行われ、様々な特徴をもつプロセッサが生まれております。様々なプレーヤにより市場競争が激化することにより価格も適正化(激安化の恐れもありますが)し、ビジネスモデルも多様化しております。
これはこのまま使う側(ユーザ)のメリットになり、ライセンスフリーで公開されているもの、商用のもの様々なプロセッサの中から、幅広く選択することが可能です。それこそ予算に合わせた様々な選択肢が可能になります。これこそがコストメリットだと思います。なお、補足ですが、RISC-VでオープンなのはISA(Instruction Set Architecture)で、それを実装したプロセッサ(主にはRTLという形で存在)は商用のものもあります。オープンなものは基本誰も保証してくれないので使う側の責任(Own your risk)になり、自分たちで検証したり品質を確保する必要がありますが、商用のものは保証(補償?保障?)やサポートがつくのが通常なので、むしろ安くつく可能性もあります。
次に中立性、商用のISAの場合、ライセンスを持つ1社の以降で、価格や仕様や利用条件がコントロールできてしまいます。長期的に活用を検討する使う側からするとこれは大きなリスクになります。オープンな規格の下、世界各地で様々なプロセッサが開発されているRISC-Vであれば、その心配はなく、A社のRISC-VコアからB社のRISC-Vコアに乗り換えても開発環境や開発したソフトウェア資産は基本そのまま利用可能です。まずはフリーなもので評価を進めてみて、実際に利用するときは商用のものを購入するということも可能で、評価期間に構築した環境やソフトが無駄になることなく、そのまま移行できます。当面は商用ISAのプロセッサを利用する場合でも、BCP(Business Continuity Plan: 事業継続計画)として、バックアップとしてRISC-Vを検討しておくというのも良いのかなと思います。
ということで、RISC-Vというオープンな規格の下作る側として様々なプレーヤが登場し、使う側としても多様な中から選ぶことが可能になります。これにより使う側としては特定のプロセッサメーカに依存するベンダーロックインを回避し選択の自由と拡大が得られると思います。これこそ、RISC-Vを使う最大のメリットなのかなと思う今日この頃です。
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